中日新聞 三重版
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数多くの出会いをつむいできた「駅」。その歴史を知ると、旅はもっと楽しくなる。
三重県の駅にまつわる歴史・文化を探る当企画。第一回は伊勢神宮参詣の拠点、近鉄山田線・鳥羽線宇治山田駅へ。
街を象徴する城下町の遺構と鮮魚列車
 
鉄道網の創生期に誕生した歴史ある駅

 近鉄松阪駅が誕生したのは、1930(昭和5)年3月27日。当時の参宮急行電鉄(現在の近鉄)が、大阪方面から伊勢神宮への参詣の便を図るべく、1927(昭和2)年から近鉄桜井駅(奈良県)・宇治山田駅間の全線工事に着手。翌々年10月27日に近鉄桜井駅・長谷寺駅(奈良県)間、1930(昭和5)年2月21日に長谷寺駅・榛原駅(奈良県)間が開業し、近鉄松阪駅・外宮前(現・宮町)駅間の17・9キロがこれに続いた。近鉄松阪駅が完成した当時は、青山トンネルを挟んだ東西は結ばれていなかったが、その後も路線の整備が進められ、翌年の1931(昭和6)年3月17日には上本町駅と宇治山田駅間が開通している。
 かつてはJR松阪駅の西側に「新松阪駅」と呼ばれるもう一つの駅があった。この駅は伊勢電気鉄道が敷いた路線上にあったもので、最長期には桑名駅と新松阪駅、さらには新松阪駅と大神宮前駅(外宮の外苑側にあった駅で現在は廃駅)が結ばれていた。地元民に愛された新松阪駅は、夏になると海水浴のため江戸橋(津市)へ向かう乗客でにぎわったという。1942(昭和17)年に新松阪駅・大神宮前駅間が無くなり、また1961(昭和36)年に江戸橋駅・新松阪駅間が廃止に。津市内や松阪市内の旧伊勢線敷地は道路に変わり、今でも一部が「近鉄道路」と呼ばれている。


今では貴重な存在になった鮮魚列車

 港を有する松阪を象徴するのが、1963(昭和38)年から運行を開始した「鮮魚列車」だろう。かつての私鉄では行商人のための専用列車が運行されていたが、現在は数少なくなっている。鮮魚列車もその一つで、「伊勢志摩魚行商組合連合会」の貸切車両として誕生。一般営業車両を改造した列車は日曜・祝日を除く毎朝、宇治山田駅を出発した後に、近鉄松阪駅などで積み込みを行い上本町駅へ。運行開始時からほぼ変わらないダイヤで今も走り続けている。今では、関西の私鉄で鮮魚列車を運転しているのは近鉄のみ。現在の車両にはマルーンレッドの塗装が施され、車体正面には2本の白帯が入っている。行き先を示す方向幕に「鮮魚」と書かれた列車を目にしたら、記念撮影をするのもよいだろう。

早春薫る城下町を散策する楽しみ

 近鉄の資料によると、近鉄松阪駅の2005(平成17)年、1日の乗降人員は1万3690人。1975(昭和50)年頃の約2万7000人をピークに減少傾向にあるが、駅周辺ではマンションなどの開発が進み、郊外に流れた人々が再び戻ることも予測されている。最近はガイドブックやパンフレットを片手に、近鉄松阪駅を拠点としたハイキングを楽しむ人も少なくない。
 蒲生氏郷によって開かれた松阪は、手厚い商業保護により商人の町として発展した歴史を持つ。松阪周辺で生産された木綿は、繊細な縞模様が江戸町人の間で人気を集めた。また、豊かになった城下町では知識人が育ち、中でも国学者の本居宣長はその代表とも言える。駅のそばには、蒲生氏郷が築いた松阪城跡や、本居宣長記念館、松阪の豪商の一人、小津清左衛門の邸宅を利用した松阪商人の館などが点在。駅で配布されている沿線案内を使って、春の足音が聞こえる城下町を訪ねてみるのも楽しい。
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宇治山田駅の写真
(上・右下)昭和40年頃の近鉄松阪駅。ホームに停車する車両は、近鉄のシンボルとして活躍した新ビスタカー
(左下)現在の近鉄松阪駅
駅の西側には本居宣長が愛した鈴をモチーフにしたオブジェが
(上左)戦前の名車として知られる2227形2242も鮮魚列車として使われた。布施駅にて1966(昭和41)年に撮影
(上右)近鉄松阪駅で早朝、伊勢湾で獲れた海の幸を積んで出発を待つモワ600形。1985(昭和60)年に撮影
(左)現在も運行する鮮魚列車3代目。俊徳道駅にて2001(平成13)年に撮影
廃止間近の新松阪駅の様子
駅のたのしみ
本居宣長に由来する鈴の銘菓
本居宣長は住居を「鈴の屋」と称するほど鈴を愛していたと言われる。そんな故事に由来して作られた「鈴最中」は、鈴の形をした皮に2種類のあんが入ったもの。万古焼の鈴も付いている。(近鉄松阪駅売店にて取り扱い)
ロータリーにある本居宣長の歌碑
近鉄松阪駅東側のロータリーでは、昭和48年に除幕した本居宣長の歌碑を見ることができる。櫛田川上流産の自然石に刻まれた文字は「よひのもり木高き陰に里人の 家居もしけく今そ栄ゆく」。駅に降り立ったら足を止めてみたい。
取材内容は平成20年2月現在のものです。
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