中日新聞 三重版
machikado information
数多くの出会いをつむいできた「駅」。その歴史を知ると、旅はもっと楽しくなる。 三重県の駅にまつわる歴史・文化を探る当企画。第一回は伊勢神宮参詣の拠点、近鉄山田線・鳥羽線宇治山田駅へ。
旧城下町へアクセスする近代的なステーション
 
名古屋進出を目指し1931年に開業

 安濃川と岩田川に挟まれた、津市の旧城下町。城郭普請巧者として知られる藤堂高虎の手によって、1611(慶長16)年から進められた整備・改修は、居城として必要な規模と、伊勢街道第一のまちとしての体面と美観とを備えるために、大がかりなものであった。またこの辺りには、奈良時代に開山した津観音や、日本初の本格的な五十音順国語辞典を生み出した谷川士清の旧宅など、歴史的価値の高い建造物が点在しており、現在も津市の中心地として、にぎわいを見せている。
 今回取り上げる近鉄名古屋線の津新町駅は、そんな旧城下町を東に見る場所に位置。同駅が開業したのは、近鉄の前身である参宮急行電鉄時代にさかのぼる。参宮急行電鉄は、大阪方面から伊勢神宮への参拝の便を図ることを目的として1927(昭和2)年に創立された。青山トンネルなどの難工事を経て、1930(昭和5)年12月に上本町駅から山田(現在の伊勢市)駅までを開通。そして1931(昭和6)年の正月には、大阪から日帰りの伊勢神宮初詣を実現させた。さらに名古屋への進出を目指した同社は、中川駅・桑名駅間の免許を取得。1931(昭和6)年7月4日に、同社津線として久居駅・津新町駅間が開業している。開業当時は周辺の紡績工場や三重県師範学校(三重大学教育学部の前身)へ通う人々の足となり、夏季は津市内の海岸への海水浴客が多く訪れた。なお当時は「青山トンネル夕涼み列車」と呼ばれる特別列車があり、津新町駅・西青山駅間を、車内に紅白の提灯をつけた列車が走ったという。


戦災した駅舎を再建やがて駅ビルに改築

 1932(昭和7)年4月、津線は津駅まで延伸。当時、大神宮前駅(現在は廃駅)・桑名駅間の路線を営業していた伊勢電気鉄道と連絡運輸を開始した。その後、参宮急行電鉄は1936(昭和11)年9月に伊勢電気鉄道と合併。さらに1941(昭和16)年3月には大阪電気軌道が参宮急行電鉄を合併して関西急行鉄道を設立し、津新町駅は同社の名古屋線の駅に変わった。
 この頃になると戦雲が拡大し、日本は太平洋戦争に突入。全国的に地方鉄道の合併統合が進められる中、関西急行鉄道は南海鉄道と合併し、1944(昭和19)年に近畿日本鉄道が設立(※後の南海電鉄は1947年に分離)。津新町駅は営業路線630余キロ、日本最大の私鉄の一部となった。
 1945(昭和20)年春から戦争が終わるまでの約半年間、近鉄の沿線は約50回に及ぶ空襲を受け、津市も市街地の約70%が焦土と化した。津新町駅も駅舎が焼失し、後に建て直された。またこの戦争によって名古屋線の揖斐・長良川橋梁が破壊され、復旧するまで同線は国鉄関西線橋梁への乗り入れ運転を余儀なくされた。
 戦後の復旧工事がひと段落した後、名古屋線は1959(昭和34)年に広軌化。そして高度経済成長の波に乗り、沿線サービスの強化が進められる。1969(昭和44)年には津新町駅の駅ビル工事が着工。翌年3月に完成した建物は、1・2階に駅務室やコンコース、旅行営業所が入居し、その他の部分は近鉄東海ストアの売り場となった。またビルの建設と並行して駅前広場が整備され、津市の南玄関口にふさわしい駅が完成した。

マンション併設型の新しい駅に

 現在の津新町駅は、単式と島式の2面3線のホームが特徴となっている。これは、近鉄名古屋駅とを結ぶ区間列車の折り返し駅であるためであり、3番のりばを上り折り返し線の到着ホームとして利用。折り返し列車がない日中(午前9時〜午後3時)は3番のりばは閉鎖されている。
 2006(平成18)年3月には駅ビルの一部を撤去し、1階にテナントを配した高層マンションにつながる駅に生まれ変わった。周辺にもマンションの建設が進み、駅のさらなる発展が期待される。
 そして津新町駅の見どころといえば、10月に津市中心街で行なわれる「津まつり」が外せない。津藩二代藩主である藤堂高次により創始された「津八幡宮祭礼」を起源とする、秋を彩る風物詩。歴史ある唐人踊りや八幡獅子舞、しゃご馬などで市内が彩られる。今年は10月11日(土)・12日(日)の予定なので、津新町駅を利用して足を運ぶのもいいだろう。
15
津新町付近で撮影したモニ6223。1960(昭和35)年5月の写真
いずれも1969(昭和44)年の駅ビル着工前の様子。現在は旧駅舎の位置に派出所が建っている
参宮急行電鉄の社章
(写真左)1970(昭和45)年に完成した津新町駅ビルと、(写真右)現在の様子。奥の建物がマンションに変わっている
区間列車の折り返しがない時間帯は、
3番のりばは閉鎖されている
駅のたのしみ
伝統芸能が集う津まつり
津市を代表する祭のひとつで、朝鮮通信使の身なりを真似て踊る唐人踊りが有名。また、安濃津よさこいや、高虎時代行列なども見もの。
津まつり実行委員会事務局 TEL059-229-3170
津が生んだ国学者の旧宅
1709(宝永6)年に生まれた谷川士清は、日本初の五十音順国語辞典「和訓栞」の著書で知られる国学者。現在、津新町駅から徒歩10分の位置に旧宅が復元・一般公開されている。TEL059-225-4346
取材内容は平成20年8月現在のものです。
トップへもどる
 

Copyright (C) The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.
本ページ内に掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます